<<話選択へ
<<前のページへ
(3/3ページ)
「あん……っ!」
葵らしからぬ媚びた悲鳴に、亜里沙は興奮する。
彼女が媚びてなどいないことは、跳ねあがった腰から明らかだった。
真神の聖女は純粋に快感に悶えたのだ。
「動いちゃダメって言ってるでしょ?」
「ご……ごめんなさい……」
理不尽なことを言われているのに謝る葵の馬鹿正直さに危惧を覚えながらも、
亜里沙の裡には虐めてやりたいという嗜虐の火が灯る。
葵の真剣さに付き合うつもりは更々なくても、飽きるまでは遊んでも良いと思ったのだ。
律儀に動きを止めたヒップを、亜里沙は撫で回す。
もう邪心を隠そうともせず、ラヴィアの方にも指を伸ばして葵を弄んだ。
「あぁ、ん……うぅぅん……あぁ、はぁ……ん……」
葵の方ももはやシェービングなど行われていないのは判っていながら、
亜里沙を咎めることもなく官能に身を任せている。
頬をマットに押しつけ、唇を艶めかしく開いて吐く喘ぎは、
徐々に途切れることがなくなり、深いものへと変わっていた。
「っふ……駄、目……駄目、よ……ああ……ああん……あ、あ……」
溶けるような快感に、身を委ねる。
それが良くない、破滅を招いてしまうかもしれないものだと知りながら、葵は抗わなかった。
これまで真面目であることを求められ、また自身もそう思っていた人格が、
実はそうではなかったという認識は、不思議と嫌悪をもたらさなかった。
亜里沙というおそらく本来なら言葉を交わすことさえなかっただろう奔放な女性との出会いは、
葵がこれまで歩んできた真っ直ぐなレールを、線路ごと変えてしまうものだった。
「く、うぅ……っん、あぁぁ……」
他人の眼前で足を開き、恥ずべき場所を見せつけ、触らせる。
たとえ恋人ができたとしてもそんな光景は想像していなかったというのに、
恋人でもない同性に身体を許し、しかも快楽を露わにするなど。
「……っふ、あ……! う、あぁ、ん、っう……!」
自分のものとも思えない、爛れた喘ぎが浴室に反響する。
亜里沙の指が性器をほぐし、後ろの孔にまで刺激を与える時、葵は途方もない解放感に包まれるのだ。
尻孔に指が浅く沈み、捏ねる。
亜里沙の指遣いは口調とは裏腹に優しく、決して苦痛を伴わない。
そこが最初からそのための場所であるかのように快感だけをもたらし、葵を背徳の沼に引きずりこむのだ。
「駄、目……駄目よ、ああ、駄目……ぇ……」
さかんに頭を振る葵は、しかし亜里沙を止めようとしない。
同級生の男子がする妄想よりも数倍卑猥に腰をくねらせるのは、逃れるためでなく、
より大きな快楽を求めてのことだ。
亜里沙と出会うまでは知らなかった悦び。
即物的なものに過ぎず、泡よりも儚く消え、後に残るのが泥のような後悔だけだとしても、葵にはそれが必要だった。
剃毛は自分から言い出したこととはいえ、尻孔まで触られるとは思っていなかった葵だが、
亜里沙の愛撫が上手なのか、最初の嫌悪を過ぎてしまえば不快はなく、
むしろ性器とは微妙に異なる快感が身体に浸透していくのだ。
「う、ン……あぁ、あ、くぅ……ん……」
孔の周縁を掻く指に、鼻を鳴らす。
意識と無意識の狭間、理性と本能の境界は、永遠に浸かっていたくなる心地だ。
葵は尻を掲げなおし、心持ち息を抜いて更なる快楽を求めた。
だが、悦びは突如として去ってしまう。
恍惚を覚まされ、困惑顔で振り向く葵に、亜里沙は澄まして告げた。
「終わったわよ」
葵の口が薄く開き、そして閉じる。
その間に何か声が発せられることはなく、まだ抜けきれていない彼女の育ちの良さを窺わせた。
「あ……ありがとう」
さりげなさを装って口の端に垂れた涎を拭い、葵はようやくそれだけ言った。
すっかり火照った肉体は、うかつに起き上がるだけで疼いてしまいそうだ。
亜里沙の指遣いが残る部分に触れたい衝動を、相当の努力で堪えねばならなかった。
そんな努力を知ってか知らずか、亜里沙は自分の髪に触れるような気軽さで葵の陰部に触れる。
「あッ……!」
「ツルツルになったわよ」
思わず出てしまった声を無視して囁く亜里沙に、葵の頬が再び紅に染まった。
亜里沙は葵の知らないことを多く教えてくれる、姉のような存在であるが、
同時に一筋縄ではいかない意地の悪さがある。
殊にこのような葵がほとんど無知といってよい分野では、
葵を格好のからかいの種として愉しむ癖があった。
今まで触れられたことのなかった、恥毛が茂っていた部分を直に触られて、
今更同性とはいえ他人に秘部を晒していたことを思いだして隠そうとするが、
亜里沙の嗜虐心はすっかり焚きつけられていた。
背中側から尻孔を覆おうとする葵の手を掴んだ亜里沙は、
その手に指を絡めながらもう片方の手で尻の溝をなぞる。
「オマンコもお尻の孔も、全部丸見え」
葵は小さく身じろぎしたが、手を払いのけようとはしない。
この虫も殺さぬような穏やかな顔立ちの少女の本性が、
どちらかといえば自分に近い快楽に溺れる性であることを、亜里沙は見抜いていた。
真剣に亜里沙を――つまり、快楽以上のものを求めるのは困りものだが、
快楽に限るならばこれほど面白い相手もそうはいない。
飽きるまではとことん遊んでやろうと思うのだ。
「せっかくだからさ、自分で拡げてみなよ」
「………! そんな……」
葵の悲鳴がそこで留まったのは、亜里沙の怒りを買うと思ったからかもしれない。
亜里沙が何も言わずにいると、生まれて初めて新雪に触る幼児のようにおずおずと指が性器に伸び、
薄く開いた秘唇をくつろげた。
「見ない……で……」
羞恥も極まれりといったか細い葵の哀願を無視して、亜里沙は女の洞を覗きこむ。
男の侵食を受けていない桃色の肉壁は俗世離れした葵の肉体らしからぬ生々しさで迫り、
亜里沙はほとんど吸い寄せられるようにとば口を広げた淫門にしゃぶりついた。
「あ、あッ……! あ、亜里沙ッ……!」
体奥に入ってくる熱い粘塊に、葵が身悶えする。
その太腿を抱え、亜里沙は音を立てて染みでる淫水を啜り、柔らかな肉壁を舐めた。
「ひっ……あ、うぅ……あ、そ、こ……ああ……ッ!」
何度かの責めで充分過ぎるほど焦らされていた葵は、
たまらないとばかりに嬌声を上げ、腰を揺らして快感を享受する。
その劣情に塗れた痴態は、スレた亜里沙をも満足させるものだった。
「ふふン、こんなに濡らしちゃって、そそらせてくれるじゃないッ……!」
舌なめずりをした亜里沙は、葵の片足を持ち上げると、開いた股間に自分のそれを近づけた。
興奮した視線が一点に注がれているのを確かめると、見せつけるように足を広げ、股間同士を接合させた。
「あ、あ……!」
おそらくは肉体の快感よりも精神的な興奮でこぼれた葵の声が浴室に響く。
清楚な美少女の痴態にそそられた亜里沙は、白い左足を両手で抱きかかえて腰を揺らした。
「亜里、沙……!」
「アンタのとアタシのクリが擦れてるの……判るでしょう?」
「え、えっ……あ、ああぁっ……」
葵は問いかけに答えはしているもののおぼつかなく、マットに身体を預けて快楽に酔っている。
サディスティックな笑みを浮かべながら、亜里沙は葵の急所を集中的に責めた。
「あ、うっ……ん、あぅ、うぅ……っ」
腰が痺れるほどの快楽に葵は酔っている。
クリトリスやヴァギナはもちろん、無毛となった下腹部も敏感すぎるほどに亜里沙の柔肌の質感を伝え、
ほとんど彼女と融けあうような心地だった。
「ああ……ああ、あぁっ……!」
涎と喘ぎが同時に、大きく開いた口からこぼれる。
赤らみ、歪む顔に聖女の面影はどこにもない。
金の代償ですらない、ただ快楽のために股を開き、肉体を捧げる淫婦がそこにいた。
「お、お願い……私の……」
「私の、何?」
問い返されて瞬間、葵に理性が戻る。
だが大きかったはずのそれはもはや路傍の石程度でしかなく、満ちる肉欲を制することはできなかった。
「私の……私のおまんこ、もっと気持ち良くして……ッ!」
舌に乗せた卑語が、真夏に飲む炭酸のように沁みわたる。
毛穴からこれまで葵を縛っていた成分が吹きでて、途方もない解放感が足の指先にまで疾り抜けた。
「ふふッ、とんだ聖女サマねえ」
亜里沙の嘲りでさえ快く、葵は自分から腰を動かし、密着した性器をさらに押しつける。
粘液に塗れた秘裂がぬらりと擦れ、目がくらむような快楽に見舞われた。
夢中でシーツを掴み、喘ぎをほとばしらせる。
「あぁッ、いい……! 気持ち良い、の……! 」
心のおもむくままに、肉体の求めるままに、振る舞うことの悦び。
「ほらッ、もっと腰を振ってみせなよッ!」
強い口調で命じられ、それに従う恍惚。
葵は全ての穴から快楽物質を垂れ流して歓喜にのたうった。
男さながらに腰を打ちつけながら、亜里沙は笑う。
邪悪ではないが他者を支配する嗜虐に満ちた、粘ついた意思がしたたり落ちそうな笑みだ。
葵の右足を敷き、左足は抱えあげ、限界まで開かせた股の間を己の同じ部分で念入りに擦りあげる。
恥毛を剃って滑らかになった陰部が擦れるのは気持ちが良かったし、
釣り上げられた魚のように肢体をひくつかせて悶える葵を見下ろすのは気分を高揚させた。
「フフッ、そう……いいわよ、上手じゃない……」
褒められて気を良くしたのか、腰の動きが少しずつ大きくなっていく。
ぎこちないながらも滑らかな白い肌がうねるさまは、亜里沙を満足させ、深い吐息が彼女の紫に塗られた唇を濡らした。
「そんなにイキたいの? しょうがないわねえ……イイわ、イカせてあげる……」
上体を後ろに倒した亜里沙は葵の足首を掴むと、腰を前に突きだして激しく振り始めた。
葵の動きとは比較にならない、男の抽送にも引けをとらない腰使いがたちまち葵を追い詰める。
「あっ、あああっ……! 凄、い……!」
「たまんないでしょう?」
自在に腰を操り、一瞬も途切れることなく快感を与え続ける亜里沙に、葵は顔を紅潮させて頷くばかりだ。
泡立った粘液が潤滑となり、擦れあう二人のラヴィアを快楽に痺れさせる。
「ああッ、亜里沙ッ、私ッ……!」
「イクときはイクって言うんだよッ、教えたでしょうッ!」
腰と同じ強さで語気を叩きつける亜里沙に、葵は喉を反らせて叫んだ。
「イク……ッ! 亜里沙、ああ、イク、イクッ……!」
限界まで背中をしならせて喘ぐ葵に、亜里沙はなお動きを止めない。
追い立てられた一瞬息を詰まらせたかと思うと、一気に頂へと上り詰めた。
「ああああッ――!!」
卑猥というよりも下品に腰がくねり、二度、三度と弾丸を打ちだすように震える。
張り詰めた足を抱える亜里沙も、葵の絶頂に呼応するかのように、
こちらは大きく一度、全身を震わせて性の愉悦に身を浸し、満足気に力を失った葵を見下ろすのだった。
行為が終わった後の余韻に、亜里沙は興味がない。
それよりも行為そのものを時間一杯まで愉しみたいという性なのだ。
しかし今、浴室から出た亜里沙は葵と二人でベッドに横たわっていた。
中途半端な休憩時間の残りがそうさせたのだが、亜里沙にとって不本意であることに変わりはない。
まして葵が情感たっぷりに亜里沙を見つめ、今にも愛を囁きそうな顔をしているとくれば、
先手を取って眉間に皺を刻みたくもなるというものだった。
亜里沙の渋面などまるで気づかぬ風で、葵が口を開く。
「とても気持ちよかったわ、亜里沙」
「そりゃ良かったわね」
手さえかけられない氷壁のように言う亜里沙にも、葵は動じなかった。
「ねえ、亜里沙は気持ちよかった?」
リップの色映えを問うかのように屈託なく訊ねる葵に、
幾分かの面倒くささを覚えた亜里沙は、彼女が腕を絡めてきても、それには構わず天井を見上げてそっけなく言った。
「あァ、そうだ。陰毛、すぐに生えてきてすっごくチクチクするから」
悪意とまではいかなくても、しょげかえるのを期待して告げた事実だったが、
葵はむしろ顔を輝かせて応じたものだった。
「それなら、また亜里沙に剃ってもらわないといけないわね」
思わぬ返しをされた亜里沙は顔をしかめ、唇を尖らせた。
効果的な反撃を思いつけず、苦し紛れに呟く。
「自分で剃りなさいよ、次からは」
「ね、今度は私が亜里沙のを剃ってあげる」
かさにかかってとんでもないことを言い出す葵に、亜里沙は思わず向き直った。
葵は幸せそうに微笑んでいる。
かつてない不穏な雰囲気を感じ取り、亜里沙は本気で答えた。
「いッ、嫌よ」
「どうして?」
「どうしてって……」
これまでの人生を嫌なものは嫌、で済ませてきた亜里沙は、ロジックを求められて苦境に陥っていた。
「私、丁寧に剃るわ。一本も残さないくらい、丁寧に。あ、もちろん、お尻の周りも剃ってあげる」
邪心もなく言い放つ葵に、亜里沙は再び天を仰ぎ、煙草を吸いたいと強く思うのだった。
<<話選択へ
<<前のページへ